国土交通省より「≪大家さんのための≫単身入居者の受入れガイド」というものが発表されました。
題名だけ見ると、国土交通省がなぜこのようなガイドを作成するのかと疑問を持たれる方も多いと思います。
目次
「≪大家さんのための≫単身入居者の受入れガイド」の概要
題名に言葉足らずなところがあり、パッとはわかりにくいのですが、ここでいう単身入居者というのは高齢単身入居者のことです。
賃貸の場合、高齢者の入居は断られるケースが多く、高齢者の方のお住まい探しが困難になることが多々あります。これは、オーナー様や管理会社の判断で断るケースが多いためです。そのため、少しでもそう言ったことが少なくなるよう作成されたガイドのようです。
8ページにまとめられたガイドのためサッと読めますが、大まかに言うと
高齢単身入居者様と契約前
- 入居者に関する情報の丁寧な聞き取り
- 終身建物賃貸借や定期借家の活用検討
- お近くの社協等のサービスを事前確認
- 家賃債務保証業者の活用検討
- 損害保険、少額短期保険の活用検討
- 様々なサービスの利用を入居者におすすめ
高齢単身入居者様が入居中
- 生活パターン(かかりつけ医等)の確認
- 会う機会の創出(家賃の手渡し等)
高齢単身入居者様が死亡後
- 相続人等に連絡し、必要な対応を依頼
- 相続財産管理人申し立て制度の活用検討
以上のことが細かく書いてあります。詳しくはこちらをご覧下さい。
URL:http://www.mlit.go.jp/common/001282891.pdf
大半が通常の賃貸募集でやっていることですね(^^;)
また、オーナーさんの負担になりそうなこと(家賃の手渡し等)だったり…
これだとなかなか増えていかなんじゃないか・・・なかなか難しいですね。
賃貸人に対しての「終身建物賃貸借」
「≪大家さんのための≫単身入居者の受入れガイド」の中で、聞きなれないワードが出てきます。それは、「終身建物賃貸借」です。
あまり聞く機会のない、聞きなれない言葉ですよね。
この終身建物賃貸借というのは平成13年にできた「高齢者の居住の安定確保に関する法律(高齢者住まい法)」で定められた、借地借家法の特例です。
通常の普通賃貸借と何が違うかというと
契約期間が死亡に至るまでということと、賃借権の相続がないということです。
また、終身建物賃貸借契約を結ぶには賃貸人(オーナー)が都道府県知事の認可が必要です。
この認可については、平成30年9月の省令改正により簡素化されて既存住宅であれば、便所、浴室及び住戸内の階段等に手すりを設置すれば認可されるようになったようです。
賃借人に対しての「終身建物賃貸借」とメリット
上記は賃貸人についてでしたが、反対に賃借人については
60歳以上の高齢者であるということです。
以上3点が大まかに言った普通賃貸借との相違点です。
それでは、上記の違いでどう変わってくるのかですが、賃借人の相続がないというところが大きく、普通賃貸借の場合、居住者が死亡した場合はその賃借人の相続人を探し、その相続人に普通賃貸借契約の解約手続きをしてもらわなければならないため、賃借人が死亡してからすぐに解約ができませんでした。
終身建物賃貸借の場合は賃借人が死亡により賃貸借契約が終了するため普通賃貸借契約のような時間差がないというのが大きな差になります。
さらに、退去理由は限定的なため、安定収入になりやすいというメリットもあります。
「終身建物賃貸借」のデメリット
それでは心配事を見ていきましょう。
認可を受けてしまうと高齢者しか入居できなくなるのではないか?一度入居させてしまうと家賃等の滞納があっても契約の解除が出来ないのではないか?という心配がありますが、そのようなことはなく、認可を受けた後に高齢者ではない入居希望者がいれば普通賃貸借契約での入居受入れも可能ですし、家賃の滞納や用法義務違反による契約の解除は可能ですし、建物の老朽により建物の維持が困難になった時も解除できます。
「終身建物賃貸借」の注意点
それでは注意点を見ていきましょう。
終身建物賃貸借契約の場合、独特なものがあります。仮入居というものです。
必ずしなくてはいけないというものではありませんが、希望があった場合には1年以内の定期借家契約をしなくてはいけないというものです。その後に終身建物賃貸借契約を結ぶかどうかを賃借人が判断するものです。これはちょっと特殊ですね。
それ以外で注意点は権利金等が取れないことと、終身なので更新料が取れないということです。
「終身建物賃貸借」のまとめ
昨今、少子高齢化が叫ばれ2025年には団塊の世代が75歳を超えることから、高齢者単身及び高齢者夫婦のみ世帯の急増が見込まれ、さらに少子化により高齢世帯以外の世帯が減少します。
そうなった際に賃借人の対象が高齢世帯が中心になってきます。
そういったことから、高齢者の賃借人としての受入れは重要になってくると思われます。
もちろん、死亡後の動産の撤去であったりの問題もありますので、それらへの対策は必要ですが、高齢者の賃借人としての受入れの検討が必要になってきます。
空室がなかなか埋まらない等のお悩みがある方も、一度ご検討いただければと思います。